2010年05月18日

イタリア映画祭2010その12「やがて来る者」

今回のイタリア映画祭で、最後に見たのが、Giorgito Diritti監督作品「やがて来る者=原題L'uomo che verra'」だった。今回の映画祭のプログラムには、彼のインタビューが載っていたが、その冒頭の解説では、ここ数年のイタリア映画界でもっとも謎めいた存在と書かれていた。
というのも、彼が自主制作した長編映画「Il vento fa il suo giro(日本では未公開で、プログラムの中では『風は自分の道を巡る』と訳されていた)」が、各国で賞を受賞し、イタリアではミラノの単館上映で1年半のロングランされた。しかし、実際に彼のこの作品を見たイタリア人は、ごく限られた人たちだったからだ。
幸運にも、僕はイタリア人の友人が面白い映画があるからとDVDを送ってくれて、この作品を見ている。このブログでも記事にしているので、詳しくはそっちを見てほしい。

で、今回の作品なのだが、第二次大戦中に、イタリアで実際に起きた、ナチスドイツによるイタリアの村人の集団虐殺を描いたものだ。イタリアでは「マルザボットの虐殺」として知られているそうだ。
主人公は、幼い少女。彼女は生まれたばかりの弟を亡くして以来口が聞けなくなっている。そんな彼女が住む村は、ナチスドイツとパルチザンの戦いの最前線にあった。パルチザンのゲリラ攻撃に手を焼くナチスドイツ軍は、ついに村人全員をパルチザンのメンバーとみなし、老人や女子供も含めて虐殺してしまう。
その中で生き延びた主人公の少女は、生まれたばかりの弟と共に、「やがて来る者」を待つ。

歴史的考えれば、「やがて来る者」とは、イタリアを「解放」した連合軍=アメリカ軍ってことになるのだと思う。

この映画も、彼の前作同様、舞台となったボローニャ近郊の村の方言が使われている。アルバ・ロルヴァケルやマヤ・サンサといった現在のイタリア映画を代表する女優たちも出演しているが、彼女達も方言で演じている。
映像も、前作同様、そこに住む人々とそれを取り巻く自然を丹念に映し出し、物語りに重厚さをもたらしていた。ある意味、イタリア・ネオレアリスモの系譜を感じさせる作品だった。
この作品の直前に上映された「元カノ/カレ」と対極をなす作品である。
商業主義がはびこっている日本では、あまり一般受けするとは思えないこの監督の作品が一般公開されることは、まずないと思うのだが、機会があったら、是非見てほしい映画だ。
ちなみに、イタリアでもっとも権威のあるイタリア映画に与えられるドナテッロ賞の今年の受賞作品である。
posted by tady at 21:05| ローマ | Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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