2011年05月03日

イタリア映画祭2011 その2「星の子どもたち」

原題は「Figli delle stelle]」。監督はLucio Pellegrini。邦題は直訳だ。タイトルは、1978年にヒットしたAlan Sorrentiの曲から取られているという。この映画を紹介しているこんなブログもあった。
http://kspacey.exblog.jp/14556699/
監督は1965年生まれだそうで、この曲がヒットしたころは、13歳ってことになる。
あらすじは上述のブログにも書いてあるが、出だしでまず、気を引かれたのは、Morte biancaって話。直訳すると「白い死」ってことになるんだけど、いわゆる銃撃戦などで、血を流す死とは違って、労災による死のことを指す。イタリアでは、労災による死者が多く、社会問題となっているのだが、この作品の背景には、そういった事実がある。
ある意味、とても重い社会問題を扱っているのだが、この作品自体は、コメディと言っていい。
港湾労働者が、クレーンから落ちて死亡したことに端を発して、テレビの政治バラエティ番組がそれを取り上げるが、そこに出席していた担当大臣が、如何にもイタリアの政治家って感じで、厚顔無恥に詭弁を使い、問題の本質をごまかしてしまう。
それに怒りを感じた労働者の仲間と、教師の職を失ってアルバイトで食いつないでいる反体制の男、そして何の罪で服役していたのかは明らかではないのだが、釈放されたばかりの男の3人が、その政治家を誘拐することを決意する。
湯気が立ちこめる公衆浴場で、その政治家を誘拐しようとするのだが、覆面をして良く見えないままに誘拐したのは、まったくの別人。
当初、誘拐の目的は、その厚顔無恥な政治家を懲らしめようという正義感からだったのだが、別人を誘拐してしまったことから、迷走を始める。
面白かったのは、元教師が、誘拐を行った後、自宅に帰ると、そこには警官がおり、犯行がバレたのかと驚くのだが、実は連絡のつかない息子を心配して、捜索願を出した母親のところに来ていたのだった。その時の元教師のセリフが「僕はもう38にもなるんだから、自分のことは自分でできる。心配なんかしないでくれ」っていうのが、とても笑えた。その一方で、息子の方は、ガンを患っている母親をとても心配しているんだけどね。この母親の癌ってのも、物語で重要な意味を持ってくるのだが、、、、
誘拐した人質の隠れ家として、家を提供していたのが、元教師の従兄弟にあたる人物で、いかにも現実にいそうな、左翼かぶれの革命を未だに信じている男なのだ。結婚している妻は、カトリックの信者だったりして、夢としての革命を追い求めているような、ある意味現実を見ていない男なんだけどね。
ローマにあった隠れ家がヤバくなり、移動した先は、例のテレビ番組の女性スタッフが所有するイタリア北部のスキーリゾートにあるマンション形式の別荘。そこには、昔懐かしいレコードがあり、そこで流れるのがタイトルともなった1978年のヒット曲だ。
誘拐がバレないように密かにことを運ぼうとするのだが、村人の知るところとなってしまう。さあ大変って話になるはずが、村人達もイタリア政府の政策に不満を持っており、みんなそろって仲間にして欲しいと言い出す。目当ては身代金。
この辺もイタリア人気質が出ていて面白かった。ほんとか嘘か定かではないが、僕が以前聞いた話では、第二次世界大戦中、ナポリに侵攻してきたドイツ軍の戦車が、盗まれて、行方が分からなくなったことがあって、実は、住民たちが一晩のうちに戦車を分解して、それぞれのパーツを家に持ち帰り、戦車を隠してしまったってエピソードがあるそうだ。

現実の政治に不満を抱きつつも、民主主義のシステムではそれを解決し得ないと分かってしまったときに、法律を犯してでも、夢のような解決方法を夢見てしまう、大人になりきれない大人っていうのを描いている映画だと思った。誘拐という犯罪を描きながらも、そこにユーモアとペーソスがあるのは、イタリアの歴史の中で、例えばモロ首相誘拐暗殺事件やマフィアなどの犯罪組織による誘拐事件など、本当に悲惨な現実を知っているからこそかもしれない。
厳しい状況の中でも、社会正義の実現と皆が幸せに暮らせる社会という夢を忘れてはいけないよってメッセージを感じたのだが、、、、

日本で一般受けする映画かというと、それはちょっと難しいかも、、、でも、面白い映画だった。
posted by tady at 01:19| ローマ ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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