2010年03月07日

罪深き海辺 読了

大沢在昌の「罪深き海辺」を読み終わった。
久しぶりに彼の作品を読んだ。やっぱりエンタテナーって感じ。
新宿鮫ほど密ではないのだけれど、読ませてしまう文章力と物語の構成力は、さすが。
内容的には、ためになる話題がある訳でもなく(例えば医学関係を扱ったミステリーなら、脚色はしてあっても、医療の現場ってそうなんだって思わせるような話が盛り込まれているし、経済をテーマにした小説なら、経済の仕組みを解説するような内容が盛り込まれていたりする)、ある海辺の街の大地主の財産を巡るヤクザの抗争話なわけだが、読んでいて安心できる人物造型と、先が読めてしまうような物語の構成でありながら、ついつい先を読みたくなるような絶妙な語り口。
読み終わって、なーんにも残らないのだけれど、面白かった!って思わせるストーリーテリングの手腕は、トップレベルの流行作家ってこういうんだ。と納得させられてしまう。
彼の作品の中には、完全に手を抜いたとしか思えない作品もあるけれど、これはそこそこ練った作品って感じがした。
売れる作品を書き続けなければいけいないという売れっ子作家のジレンマってあるのだと思うけど、これはまあまあ成功していると思う。
ただ、面白いけど何も残らないっていう、小説の消費のあり方は、問題だと思ってる。
新宿鮫は、消費されずに残るかもしれないけれど、この作品は、後まで残るかどうか、、、、
ポケーっと面白い話を読みたい分には、いい作品かもしれない。
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2010年03月04日

アマルフィ 読了

真保裕一の「アマルフィ」を読み終わった。
例の映画になった原作である。映画は見てないけど、、、
以前彼が書いていた小役人シリーズの流れを汲むものって感じだが、今ひとつ切れがない。
あとがきを読むと、どうやら映画のためにという作品依頼があって、そのプロットを元に小説化したものらしい。それゆえなのかどうかは分からないけど、緻密さに欠ける気がする。
映像化してしまえば、いくらでもごまかせるって部分があるようにも感じた。
イタリアが舞台なのだけれど、出てくるイタリア語にもやや怪しいところがあったりする。
それなりに面白かったけど、読後の満足感からいうと、ちょっと物足りない。
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2010年02月15日

死体につく虫が犯人を告げる 読了

マディソン・リー・ゴフ著 垂水雄二訳の「死体につく虫が犯人を告げる」を読み終わった。
実に久々の小説以外の本だ。
これは、先日、亀屋さんの新年会に参加したときに、お借りしたもので、法医昆虫学の話である。

もともと小さい頃から昆虫が好きだった僕にしてみれば、実に興味深い本だった。
研究の対象となる昆虫は、ハエ(幼虫のウジや蛹、その抜け殻なども含まれる)がメインで、その他屍肉によってくる節足動物なども含まれる。
手短に要約すると、死体が腐敗していく時には、そこに昆虫がやってくる。その昆虫の生育度合いを詳しく調べることで、死後の経過時間が推定できるっていうのが、法医昆虫学である。

面白かったのは、麻薬中毒で死亡した場合、その死体を介して麻薬物質を昆虫が摂取するとどのように生育するかって話だ。
麻薬なんて人間界の話だと思っていたのだが、実は死体を介して環境にも影響を与えているわけだ。
つい最近も日本薬剤師会が、タミフルによる環境汚染の調査を始めたってニュースがあったけど、http://www.asahi.com/health/news/TKY201002130352.html食物連鎖によって、環境中の汚染物質が生体濃縮されて人間に影響を与えるのと逆コースがあるってことだ。

そもそもなんで、亀屋さんがこういう本を読むかというと、日本の海岸に漂着したウミガメの死体を調査するストランディングっていうのをやっていて、その死体が、死後どれくらいたっているのかを知るために、人間に関する検死や解剖学を参考にしているそうで、その延長線上に法医昆虫学もあるからだ。
ウミガメの死体を調査するのに、法医昆虫学に目をつけるっていうのも斬新な発想だと思う。
ひとつの事を探求して行くと、世界がどんどん広がっていくっていうワクワクした感じが楽しい。
久々に好奇心を刺激される本だった。
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2010年02月08日

食堂かたつむり 読了

小川糸の「食堂かたつむり」を読み終わった。
先ごろ公開となった映画「食堂かたつむり」の原作本が図書館にあったので借りてきた。
映画で主演している柴崎コウは、「GO」を見たときから、いい感じの女優だなって思っていた。
で、時間があれば見に行って見ようと思っていた矢先、この本を見つけた次第。
女性らしい感性に貫かれた感じの良い小品だった。
僕も料理は嫌いな方ではないし、食べるってことに関して結構関心がある。
作品に出てくる料理それぞれのレシピが書かれているわけではないのだが、どんな料理なのか想像しながら読むのも楽しい。
映画ではどんな風に料理が登場するのか? この作品自体をどんな風に料理しているのか、興味がわいた。
今度の休みにでも見に行ってみようかと思う。時間があればだけれど、、、、
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2010年02月05日

破裂 読了

久坂部 羊の「破裂」を読み終わった。
内容は、この前読んだ「まず、石を投げよ」と同じ医療ミスの話なのだが、焦点となっているのは老人医療だ。
上下二段組の細かい活字で、今の出版の流れから言えば、上下二巻になってもいいくらいの読みでがあった。
タイトルの破裂は、心不全のための新しい治療法を行うと、一時期急速に回復するが、その後心臓破裂を起こすってことから来ている。
登場人物は、超高齢化社会となる日本を変えるために、安楽死を合法化しようとする官僚、佐久間。癌と誤診されて医療への不信を募らせるジャーナリスト松野。父親を手術ミスにより失った娘枝利子。その手術をした医者、香村。医療ミスを現場から告発しようとする麻酔医江崎などである。手術を執刀した心臓外科医は、同時にまた、心不全の新しい治療をを開発しているという設定になっている。
こういった枠組みの中で語られるのは、医療の進歩で、苦しみながら長生きしてしまった老人は、幸せなのか? ってことだ。早くお迎えが来てほしいと望む老人も多いのではないかという問いかけがある。
老人介護施設で働いている僕には、かなり身近で、身につまされる話だった。
この小説では、国家として安楽死を老人に押し付けようとする官僚の思想を、ナチスドイツの思想に例えているが、この点は、その通りだと思う。あくまでも、本人、あるいは家族が望んむ尊厳死は、あってもいいと思う。
小説の最後の言葉が、これからの老人問題の難しさを語っていて、読み終わっても、ちょっと考えてしまった。

作品としてみると、作中で、何人かが殺されるのだが、それはストーリー展開の上での必然的な殺人とは思えなくて、殺害理由も説得力に欠けており、納得がいかなかった。
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2010年01月22日

殺気! 読了

雫井脩介の「殺気!」を読み終わった。
本を返しに行ったら、彼の新刊本が、新着本の棚にあったので、ついつい借りてしまった。
この間読んだ「犯罪小説家」とは、かなーり趣きを異にする作品で、主人公は20歳のキャピキャピの女子大生って設定。文体もやたら軽くて、売れっ子作家は、やっぱりいろんなテクニックを持っているもんだとちょっと感心。
ストーリーは、主人公が殺気を感じる特殊な能力を持っているってところから始まり、何やらSFチックな作品なのかとちょっと期待。宮部みゆきの初期の超能力SFものなどは嫌いではないので、どういう展開になるのかと読み進んだのだが、話はそっちの方向には進まなかった。
舞台は、「犯罪小説家」と同じ多摩ヶ丘ってことになっている。描写からすると多摩ニュータウンあたりがモデルってことだろ。
お手軽に読める一冊って感じだ。
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2010年01月19日

静かな爆弾 読了

吉田修一の「静かな爆弾」を読み終わった。
彼の「悪人」はなかなかの力作だったのだが、この人長編はあまり書かないようだ。
この作品もすぐに読めてしまう小品である。
ただ、実に新鮮な作品だった。
主人公は、ドキュメンタリーを作っているテレビマンで、その恋人がろう者って設定だ。
主人公と恋人とのやりとりが、とっても新鮮。言葉ってなんだろう?ってことを考えさせられる。
同時に、コミュニケーションのあり方ってのも、、、

ケニアのろう者の社会で頑張ってる知人のことをちょっと前に紹介したけど、彼のブログに出てくる人々についても、改めて思いを馳せてしまった。

小品だけど、いい作品だった。
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犯罪小説家 読了

雫井脩介の「犯罪小説家」を読み終わった。
彼の「犯人に告ぐ」は結構面白かったので、図書館で目について借りてきた。
この作品、文学賞を受賞した作家が主人公で、受賞作が映画化されるって話になっている。
「犯人に告ぐ」は、いろんな賞を取って、そのあと映画化されているので、その経験を活かして作品に取り込んでいるのだろう。
テーマはネット心中(集団自殺)。年間3万人を超える自殺者がでる日本社会にとっては、自殺って重いテーマなのだが、そこはミステリー、ネットを絡めることで自殺に至までの社会的背景やら個人的な事情などの重い部分は、さらりとかわしている感じだ。
読み終わったあとの、カタルシスにちょっと欠けるというのが感想かな、、
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2010年01月13日

誘拐児 読了

翔田寛の「誘拐児」を読み終わった。
この作品は、第54回江戸川乱歩賞の受賞作だ。
たまたま図書館で目にして、江戸川乱歩賞受賞作ってことで借りてきた。
終戦直後の昭和21年に起きた幼児誘拐事件と30年代中頃に起きた女性殺人事件を巡るミステリーである。
二組の刑事、輪島と井口、神崎と遠藤が、それぞれ別の方向から事件を追い、さらに主人公とその恋人が謎解きに加わるって構成になっている。

前半は、なかなか面白く読ませてくれたが、後半はちょっと急ぎすぎ。謎解きの説得力もいまいちってところ。
でも、ある意味余分とも思える最後の人情描写はよかった。
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2010年01月09日

図書館革命 読了

有川 浩の「図書館革命」を読み終わった。
図書館で、その装丁とタイトルが以前から気になっていて、内容についてはまったく無知なまま借りて読み出した。
どうやら「図書館戦争シリーズ」の第4巻ってことらしく、僕が最初にイメージしたいわゆる情報問題を扱った社会科学分野の本とは違った。
出だしの掴みが良くて、敦賀原発が国際テロ組織に攻撃されるところから始まるのだが、その後は全然好みではなく、何度投げ出そうと思ったことか、、、、
しばしば差し込まれる少女趣味の恋愛描写には、ちとうんざり。
文体のテンポは僕にまったく会わず、読むのが苦痛に感じるほど。
作者なりのロジックがあって、それを理解し、話にのめり込める人には読みやすいのかもしれないが、僕はまったくダメだった。
それでも、やっとこさ最後まで読みきった。扱っている内容が、表現の自由と検閲ってことで、どうにか最後までよめた気がするが、もういいやってのが正直な感想。
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2010年01月04日

まず石を投げよ 読了

久坂部 羊の「まず石を投げよ」を読み終わった。
作者は医者で、作家。このパターンって結構多いようだ。
そういうわけで内容は医療問題。それも医療ミスとその隠蔽に係わる物語だ。
タイトルは、本の最初に引用されているヨハネによる福音書 第8章7節の言葉「汝らのうち、罪なき者よりまずその女に石を投げよ」からきている。
主人公は医療関係の雑誌に記事を書いている女性医療ライターという設定だ。
医者への心理実験なんて話まではそこそこ面白く読めたのだが、後半になって失速。ちょっと尻すぼみの感があった。
この作家の作品は初めてなので、後何冊か読んでみないとなんとも言えない。

しかし、医者って過労になるほど忙しいと言われているけど、小説を書く時間のある人もいるんだなw
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2009年12月24日

死神の精度 読了

伊坂幸太郎の「死神の精度」を読み終わった。
若い人に人気のある作家らしい。「終末のフール」を以前読んでいるのだが、それと同じく、これも短篇連作の形だ。
読みやすいし、そこそこ面白いけど、底が浅いって感じてしまう。
まだ、若い作家なので、こういった短篇を書きながら力をつけていくのかもしれないが、今のところ数冊読んだ限りでは、もういいかなって感じだ。
文芸春秋の発行なのだが、作中に登場人物の名字を間違えている誤植が数ヶ所あり、がっかり(田村がなぜか田中になっている)。
これは作家の問題ではないと思うけど、それにしても本の質が問われちゃうと思うんだけどなぁー
大手出版社でも、きちんとした編集者が育っていないのだろうか? 文書校正なんて基本中の基本だと思うんだけど、、、、
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2009年12月21日

ブラックペアン1988 読了

海堂尊の「ブラックペアン1988」を読み終わった。
彼の小説は、もういいやって思っていて、図書館にこの本があるのは知っていたのだが、今まで手に取らなかった。ところが、新聞広告に、文庫版になって上下二巻で発売されたとあったので、わざわざ文庫化するほど面白いのかぁ?ってことで、借りてみた。
相変わらずの海堂ワールドで、他の小説と同じように登場人物がクロスしている。ただ、今回は、あまりオチャラケタ文体ではなく、ちょっと真面目。
時代設定もタイトルどおり1988年ってことで、チームバチスタの栄光やジェネラルルージュの凱旋の前の物語。
それにしても、よくぞここまで、壮大なストーリーを拵え上げたもんだと感心してしまう。
発表された作品を、物語の時系列に沿って、読み直すと面白いかもしれない。
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2009年12月11日

ジェネラル・ルージュの凱旋 読了

海堂尊の「ジェネラル・ルージュの凱旋」を読み終わった。
映画化もされているが、そっちは見てない。
ストーリーは、「ナイチンゲールの沈黙」と同時進行の形をとっている。
どうしてそうなったかは、Wikipediaに出ていた。
それにしても、よくもまあ、いろいろと関連付けて物語を書けるもんだと関心してしまう。
海堂ワールドってのが、彼の中にあるのだろう。
ただ、このシリーズの作品をいくつも読んでいると、最初は軽妙洒脱と感じられた文体が、鼻についてきて、悪ノリのし過ぎって思ってしまう。
あっという間に読めてしまうってことは、それだけ読みやすいのかもしれないが、逆に言うと中身がないってことかもしれない。
そろそろ海堂ワールドはいいかなってこの作品を読んで思ってしまった。
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2009年12月10日

1Q84 読了

村上春樹の「1Q84 Book1&Book2」を読み終わった。
今年のベストセラー第1位ってことで、随分と売れた本だ。
図書館で借りるのは無理だと思っていたのだが、近くの地区センターの図書コーナー(便宜的にここも図書館って読んでいる)で、借りることができた。Book1を借りたときは、Book2がなくて、これは読み終わるまで、以前の「新世界より」と同じで、半年以上かかるかもと思ったのだが、幸いにBook1を読み終わってから2週間ほどでBook2を借りられて、読了できた。
上下ではなくBook1&Book2って呼び方自体、売らんとする出版社のあざとさを感じたりする。

読後感は、村上春樹の「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」と「アンダーグラウンド」をミキサーにかけて、宮部みゆきの「英雄の書」のエッセンスを加えて、シノワで漉したような小説だった。

この本がベストセラーになるというのは、作中の小説「空気さなぎ」がベストセラーになるのと同じくらい不思議な感じがする。

文体や描写の仕方など、村上春樹らしい洗練されたスタイルであるし、二人の主人公の物語が交互に語られるのは、まさに「ハードボイルド・ワンダーランド」のスタイルだし、宗教の胡散臭さとそれが人に与える影響は、「アンダーグラウンド」の世界で、そこに宮部チックなSF話が加わって、実に読ませてくれる。
だけど、これらの仕組みとストーリーを通して、何を伝えたいのかってことになると、あまりにも不定形で、読む人それぞれに投げ出されている。
だからこそ、ベストセラーになるのだととも言えるのだろうけど、読み終わって何かしらのカタルシスを感じたい読者には、欲求不満が残りそうだ。
自らが作品の意味を考えなければならないから「純文学」なのかもしれないけれど、こういった「純文学」作品がベストセラーになるってこと自体に、出版社の作為や売らんがための商魂を感じてしまったりする。
きっとそこにリトル・ピープルが潜んでいるのかもしれない。
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2009年12月02日

レッドゾーン 読了

真山仁の「レッドゾーン」上下を読み終わった。
彼は、NHKでドラマ化され、その後映画にもなった「ハゲタカ」の作者であり、この作品は同シリーズの3作目である。
テーマとなっているのは、日本の大手自動車メーカーを巡っての、中国・日本・アメリカの三つ巴の買収劇だ。
設定は2008年前半。アメリカのサブプライムローン問題が起きた時期であり、リーマンショックの直前である。
僕は、経済のことや、ましては企業買収のことなど、まったく分からないのだが、かなり面白く読めた。
話自体は、荒唐無稽であるのだが、中国の経済発展などの描き方には、かなりのリアリティがあるように思われる。
また、買収の焦点の一つとなっている技術が、クリーンディーゼルだったりして、環境問題への関心もうかがえる。
拝金主義ともいえる市場経済優先の資本主義が、グローバルな視点からどのように回っているのかってことを、エンタテイメントの形でわかりやすく説明してくれている小説とも言えそうだ。

その中で、主人公が、実はとっても古風で、筋を通すことに重きを置き、彼が理想として思い描く世界経済のあり方を実現しようと奮闘するところは、実に浪花節的であったりもする。

あくまでも小説で、リアルな世界経済とはまったく違った物であるのだけれど、日本・中国・アメリカの経済戦争って目の付け所は、時代を敏感に感じ取っているからなのだろう。

ただ、僕的には、市場経済優先の金金金の資本主義は、もう限界に来ていると思っているので、そのパラダイムを大きく変換するような視点を持った、経済小説を読んでみたいと思ったりしてる。
ブータンの国王が提唱しているGDH(Gross Domestic Happiness)=国民総幸福度を基準とした経済のあり方を描くような経済小説ってないのだろうか?
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2009年11月27日

警官の血 読了

佐々木譲の「警官の血 上下」を読み終わった。
記憶が定かではないのだが、かなり昔に、この作家の武揚伝を読んだ気がしていて、なんとなく名前は覚えていたのだが、図書館でこの名前を見つけて、借りてみた。

武揚伝は、榎本武揚のことを書いたもので、明治初期に日本からメキシコへの移民政策を行ったのが、この榎本だ。30年近く前に、僕がメキシコにいたときに、メキシコ南部の町で、移民団の末裔の人たちの話を耳にしたことがあり、当時はそんな歴史も知らず、帰国してから初めて榎本移民団の話を知った。

さて、「警官の血」の方だが、戦後から現在までを描いたもので、祖父・父・息子の3代に渡って、警視庁の警官となった一家が主人公になっている。

時代背景の描写が、なかなか面白く、戦後直後の上野周辺の状況や、2代目の警官の新左翼グループへの潜入捜査など、まさに見てきたような嘘を書きって感じで、ついつい引き込まれてしまった。

しかし、3代目の話になると、ちょっとダレてしまった感じで、最終的な話のオチは、なんだかなぁーって思ってしまって、ちょっと納得できなかった。

いずれにしても、上下2巻の作品を、最後まで面白く読ませるのは、なかなかの力量だと思った。

僕は見ていないのだが。今年の2月には、テレビドラマ化されているそうだ。
機会があったら、映像の方も見てみたいかも、、、
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2009年11月20日

ダブル・ファンタジー 読了

村山由佳の「ダブル・ファンタジー」を読み終わった。
短篇作品はいくつか読んでいるし、嫌いじゃない作家の一人だ。
今回の作品は、今までのものとは趣きをかなり異にしている。
作者自身の実生活でも、この作品の主人公のような大きな変化があったらしけど、それがそのまま作品に生きているってことなのだろう。

「過激」な性描写が数多く登場するのだが、男が書いたものではない分、女性の生理が事細かに描かれていて、男の側としては、「なるほどねぇー」と思ったり、女性の心理描写では、自分自身の過去の恋愛体験と照らし合わせて、「あの時の彼女の態度は、こういうことだったのか?」などと妙に勉強になり納得してしまうところもあった。

タイトルの「ダブル・ファンタジー」は、ジョン・レノンとオノ・ヨーコのアルバムのことで、二人で作った一つのアルバムであるのに、その中には相容れない男と女が描かれているっていう意味のことを書いている。

作者が言うところの「淫乱」な女性脚本家の男性遍歴の小説であと同時に、主人公の自分探しの過程を描いたものでもある。

柴田錬三郎賞ほか、多くの賞を受賞した作品らしいが、文学の世界において、女性が性の問題に正面から取り組んだ作品ってことでの評価なのかしらん?

人間を描く上で、性の問題は避けて通れないにしても、作者がもう少し老成して、性の呪縛から解き放たれた時に、どんな人間を描くのかってのもちょっと興味がある。
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2009年11月12日

同期 読了

今野敏の「同期」を読み終わった。
前回読んだトカゲは、いまいちだったんだけど、こっちはかなり面白く読めた。
やっぱり旬の作家ってことなんだろう。
対立する暴力団の組員が、二人殺され、その捜査を巡っての警察内部の対立ってところから話が始まる。主人公は駆け出しの刑事。その同期が公安の捜査員で、暴力団員の殺人事件から、端を発して、話は思わぬ方向へ。
脇役には、一癖も二癖もある老練な刑事が登場し、なかなか読ませてくれる。
いい感じにエンタテイメントしている。重厚さは、ないけれど、読みやすくて楽しませてもらった。
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2009年11月03日

イノセント・ゲリラの祝祭 読了

海堂尊の「イノセント・ゲリラの祝祭」を読み終わった。
チーム・バチスタの栄光と同じ、田口・白鳥シリーズの物語ではあるのだけれど、内容は随分と違う。
作者は、現役の医者であり、その彼は、AI(死亡時画像診断)の導入を主張しているわけだが、彼の主張を巡って、東大の教授から名誉毀損で訴えられたりしているリアルな世界があって、それを念頭において読むと、ある意味、厚生労働省の官僚への痛烈な批判の小説ってことがわかる。

作品として見ると、エンタテイメント性をやたらに助長した文体で、その辺がかなり鼻につく。
ただ、話の内容自体は、興味深い。

現在の医療体制を変革するための一つの手法として、小説を使うっていうのは、なかなか面白いとは思うんだけどね。

政権交代により、脱官僚の政治を目指す民主党が与党になったわけだか、本当に政治主導の政権運営が行われるならば、その影響は、小説世界にも及ぶのかもしれない。
官僚の闇の部分を描いた小説が成立しなくなって、小説世界も、脱官僚にならないといけなくなるからね。
posted by tady at 23:32| ローマ ☔| Comment(0) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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