2009年10月28日

さよなら渓谷 読了

吉田修一の「さよらな渓谷」を読み終わった。
読み始めてすぐ、現実にあった母親による幼児殺人事件がモデルになっているのかと思いきや、話は全然違う方へ。
最終的には、レイプ事件の被害者と加害者の歪んだ愛憎劇となる。

読んでいて思ったのは、奥田英朗の「最悪」とかと、文体のリズムや描写が似ているかもってこと。
また、後半は、男の作家が書いたものであるだけに、女性の目から見ると、納得できない部分もあるかもなぁって感じがあった。

200ページほどの小品だが、そこそこ面白く読めた。
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2009年10月26日

雪冤 読了

大門剛明の「雪冤」を読み終わった。
第29回横溝正史ミステリ大賞受賞作である。
扱っているのは、冤罪と死刑制度。
なかなか重いテーマとかなり真面目に向き合っている作品ではあるのだが、巻末にある選評にもあるのだが、最後のところで、コケてしまっている。
作者の思いが先走りすぎていて、読者は戸惑うばかり。
ミステリで一番大切なはずの落ち=謎解きが、あまりにも作者の独りよがりすぎる。
構図はそのままでもいいと思うけど、もう少し丁寧に書き込んでくれたら、さらに面白かったのにと、実に残念。
走れメロスをベースにして、死刑制度を考えさせるって構成は、いい感じなんだけどね。

この作品でも描かれているように、最近は、あまりにも死刑執行のペースが早いのは確か。
死刑というのは、国家による殺人だと僕は思っていて、死刑よりも、終身刑を設けるべきなんじゃないの?って思うわけだが、日本の場合は、死刑か無期懲役しかない。この間にあるギャップはかなりのもの。無期懲役って言っても、20年くらいで仮釈放になっちゃうわけで、死刑で命を失ってしまうのに比べると、無期懲役はちょっと軽すぎって気がする。
被害者の側にしても、今や人生80年の時代に、例えば20歳で殺人を犯し、無期懲役になって20年服役していたとしても、40歳。人生の残りの半分は娑婆で過ごせるとなると、殺せれてしまった人の人生がそこで終わってしまったのに比べると、あまりにも軽い刑って感じがする。

民主党政権に変わり、法務大臣が千葉景子になったことで、これからの死刑執行がどうなるのかが、かなり気がかりではある。
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2009年10月21日

覇王の番人 読了

真保裕一の「覇王の番人」上下を読み終わった。
多分、真保裕一初の時代小説だと思う。
それにしても、さすがって感じ。舞台設定、話の運び、言葉の選び方、どれを見ても、これが初時代小説とは思えないくらい良く熟れている。
時代は、織田信長が天下を奪ろうとする群雄割拠の戦国時代。主人公はあの明智光秀と彼に従う忍び。
なぜ、明智光秀は、信長を討ったのかっていのは、諸説あるみたいだけど、ここまで緻密にフィクションとして組み立てて見せる手腕は、なかなかのもの。そして、その影には、忍びの集団がいたっていう設定も、かなりリアルに感じる。
覇王とは、天下を奪ろうとする武家であり、その番人を務めるのが、忍びって意味で、光秀と忍びの小平太が交互に語られる構成になっている。
そしてその物語すべてが、ある武家の若君が、山あいの古寺の僧に語ったものであるという設定で、幕間が挿入されている。
久々に面白いと思える彼の作品を読んだ。
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2009年10月07日

骨の記憶 読了

楡周平の「骨の記憶」を読み終わった。
久しぶりに、読み応えのある小説だった。
デビュー作の「Cの福音」とは、雰囲気がまったく違う。
昭和の時代、東北の寒村から集団就職で東京に出てきた主人公。彼は小学生時代に、不可抗力から、ある人物を見殺しにしてしまった過去を持っていた。
その暗い記憶を忘れるために、東京へと出てくるのだが、これもまた、ある偶然により、まったく別の人物へと成り代わることになる。
時代は、成田空港建設やら各地のニュータウン建設が進み、高度経済成長を経て、今の日本へと繋がっていくのだが、主人公は、空港用地の土地買収に絡む大金を手に入れて、運送事業を始める。
事業が順調に進む中、金に擦り寄ってくる政治家。
一方で、バブルが弾け、没落する有産階級の醜さも描かれている。

主人公は、昭和と言う時代を駆け抜けた立身出世伝の人物という設定になっているが、抑えた筆致で描かれる物語は、実に読み応えがある。

人生の終盤に差し掛かり、自らの虚像にまみれた人生を清算し、心に黒く淀む恨みを晴らすべく、復讐のために、見殺しにしてしまった人物の骨を掘り起こす。

一番最後の部分の、登場人物の心理描写がやや強引な感じがしないでもないが、最後まで面白く読めた。

惜しむらくは、編集が酷い。重要な登場人物の一人である「弘明」の名前が、数ヶ所「弘信」と誤植されているし、目次には、存在する「第六章」がない。
文藝春秋社って大手が出している本なのに、これはあまりにもお粗末だ。せっかくの良い作品なのに、編集のレベルの低さでケチがついてしまう。
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2009年09月25日

龍神の雨 読了

道尾秀介著「龍神の雨」を読み終わった。
初めて読む作家だ。
近場にある地区センターの図書コーナーには、比較的新刊本がよく入っていて、市立図書館では、なかなか借りられない人気のある新刊本を借りることができたりする。
そこへ行ったとき目に止まったのがこの本だ。ミステリーやホラー関係の賞を受賞したことのある作家ってことで、借りてみた。
他の作品は読んでいないのでなんとも言えないのだけれど、僕的には、それほど面白いとは思えなかった。
登場人物は、継母と暮らす兄弟と継父と暮らす兄妹、そして、得体のしれない中年男。通底音としてあるのが、降り続く雨。
もうこれだけで、くらーい話って感じがすると思う。
「人間の深層心理を匠に描き出す手法は、高く評価されている」と巻末の著者紹介文にはあるのだけれど、登場人物の心理描写は、稚拙だし、設定自体がリアルさに欠ける。たとえ無茶な設定でも、読者を引き込むような文章力があれば、読む側も納得してしまうんだろうけど、少なくともこの作品に関しては、それも感じられなかった。
後半からのどんでん返しの部分で、「おっ」と思わせるところはあったのだけれど、そこに至までの伏線が弱くて、唐突な感じがしてしまった。

くらーい話は嫌いじゃないのだが、人間の心の闇を深く抉るような緻密な描写が欲しかった。あまりにも表層的な感じなんだもの、、、、
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2009年09月18日

風花&終の住処 読了

川上弘美の「風花」と磯崎憲一郎の「終の住処」を読み終わった。
文系春秋に掲載された第141回芥川賞の受賞作である「終の住処」を読み始めていて、途中で放っておいた時に、「風花」を読み始め、なんとなく二つの作品の関係が面白そうってことで、すぐに「終の住処」の続きを読んだってことで、2作ともほぼ同時に読み終わった次第。
2作とも、危うい関係にある結婚した男女の話なんだけど、「終の住処」は男の立場から、「風花」は女の視点から書かれている。
川上弘美は、「センセイの鞄」が、いい感じの小説で、小泉今日子主演でテレビドラマ化もされていて、積極的に探して読むというファンではないのだけれど、図書館で読んでいない小説があると、手にする作家の一人だ。
山本文緒とか村上由佳なんかも結構好きで、女性の視点から描かれる男女関係というのが、男の僕からすると面白い。多分に、女性の内面を覗き見るというのぞき趣味的な部分もあるのかもしれない。

登場人物も、話の展開のまったく違うのだが、なんだかコインの裏表って感じで2作を読んだ。
カップルってもののあり方を、男がどう考え、女がどう考えているのかってことを、つい対比させてしまったのだ。

面白いのは、二つの作品が、いずれも生臭くないってことだ。なんだか実に淡々としている。
嫉妬の嵐だったり、切った貼ったりだったり、修羅場ってものがない。

「風花」は、30代だと思われる女性が主人公で、「終の住処」は40代から50代にさしかかろうという男性が主人公なんだけれど、作り物の世界とはいえ、どうしてこうも淡々としているのだろう? って思ってしまった。
その淡々さが、読んでいて気持ちがよかったりするのだけれど、ふっと思うと、小説というのは、リアルな社会の反映で、現実的な、淡白な男女関係が反映されていて描かれているのだとすれば、少子化が進むのも致し方ない社会に日本はなっているのかもしれないと考えてしまった。
まさに、草食系なのだ。
読み終わって、小説としての面白さよりも、小説(物語)が生成される土壌=日本社会の行く末の方が、なにやら心配になってしまった。
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2009年09月11日

ギャングスタ 読了

新堂冬樹の「ギャングスタ」を読み終わった。
あーあ、どうでもいい本を読んじゃったって感じ。
新堂冬樹の作品は、何冊か読んでいて、「黒い太陽」で、ちょっとおもしろいかなって思ったもんだから、今回も手に取ってしまったんだけど、やっぱりダメ。
漫画の原作でも書くといいのかもしれない。
最近はテレビなんかにも出ていたり、芸能プロダクションを立ち上げたりしてるらしいけど、作家としての才能は?????
物書きとして、読み手のツボをうまくくすぐる才はあるみたいだけど、それまでかな?
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2009年09月09日

英雄の書 上下 読了

宮部みゆきの「英雄の書 上下」を読み終わった。
ほんとに多才な人で、社会派ミステリーからSF、時代物まで色々書いているのだが、ファンタジー物は、今ひとつって感じがしている。
ドリームバスターとか、ブレイブ・ストーリーは、それなりにおもしろいのだけれど、「レベル7」とか「龍は眠る」などの初期作品や「火車」とか「模倣犯」などの社会派ミステリーに比べると、どうも見劣りがしてしまう。
で、「英雄の書」なんだけど、壮大なスケールのファンタジーってのが宣伝文句だったりしたので、どんなもんだろうって興味があって、手に取ってみた。
描き出す世界のスケールは、確かに大きく、現実世界の外側にある「領域リージョン」やそれぞれの領域の中にある物語世界「輪サークル」が、多層構造になっているという設定は、おもしろい。また作家として物語を紡ぎ出すってことに対する作者なりの考え方みたいのが出ていたりするのだけれど、どうも、捏ねくり回してしまった感じで、すっきりしない。
英雄には二つの側面があるって設定も、スターウォーズのフォースとダークサイドのような感じに見えてしまった。いわゆるキリスト教的な、天使と悪魔だったり、光と闇の善悪二元論がベースになっているのだろう。それでいながら、その対立を解消する場として、「無名の地」があったりするところは、仏教的な死生観も混ざっているのかもしれない。
ただ、以前なら、やたら説教臭い勧善懲悪的な文章がしばしば見受けられたことを考えると、今回は、単純に割り切れないって話運びになっていて、なかなかに興味深い。
今回提示された物語の多層構造や、善悪だけでは割り切れない世界を、ファンタジーといういくらでも逃げ道のある(多少話に矛盾があっても、魔法やら呪文で切り抜けられてしまう)世界ではなく、現実に善悪の狭間で生起する複雑な人間社会を舞台として書いてくれたら、もっとおもしろい小説が出来上がるんじゃないか思う。
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2009年09月03日

借金取りの王子 読了

垣根涼介の「借金取りの王子」を読み終わった。
この作品は、ちょっと前に読んだ「君たち明日はない」の続編である。
前作同様、リストラ請負会社の社員、真介が主人公なのだが、徐々にその恋人である陽子に主役の座を明け渡しつつある感じだ。
そして後半では、リストラ請負会社から、派遣業へと業態の変化まである。
2007年の作品で、派遣切りが始まる以前の作品なのだが、時代の匂いを嗅ぎ取る敏感さは、さすが売れっ子作家ってところかな。

今回も、お気楽に読める作品で、電車の中で読むにはちょうどよかった。
僕自身が、同じ職種ではあるけれど、転職したばかりってこともあって、登場人物たちが、労働とは何なのだろう? 会社って何? と問いかけている部分は、現代の日本社会における働く人たち(労働者)の気持ちを少なからず代弁している感じがして、軽薄な文体であるにも関わらず、何やら考えさせられる部分も、ちょっとあった。

ストーリーの展開を微妙に変化させながら、次の設定へと進めているように思われるので、シリーズとして続きが書かれるのかもしれないって気がする。
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2009年08月26日

鎖された海峡 読了

逢坂剛の「鎖された海峡 El Estrecho Cerrado」を読み終わった。
逢坂剛の小説を読むのはかなり久しぶり。
最近の時代劇物や西部劇物は、お遊びの要素が強くて、あまり読む気がしないので、しばらく手にしなかったのだが、第二次大戦中のスペインを舞台にした一連のシリーズの一冊ってことで、久しぶりに読む気になった。
この人のスペインを舞台にした小説と神保町界隈を舞台にした小説は、なかなか読み応えがあって、おもしろい。
あっちこっちに手を出すよりも、この二つの系統の小説を、もう少し真面目に書いてくれるといいんだけどな。

この作品は、いわゆるイベリアシリーズと呼ばれている、第二次世界大戦時のヨーロッパ、特にスペインを舞台として、情報将校(ペルー国籍の真珠商ってことになっている)北都昭平が主人公の一連の作品の最新刊である。
設定は、ドイツのヒットラー、イタリアのムッソリーニ、スペインのフランコの独裁政権と、英米の連合軍による諜報戦と、そこに生まれるロマンスって話だ。
設定を中国の上海租界とした似たような小説も数々あるのだが、舞台をスペインとしたところが、まさに彼の真骨頂って感じだ。

このシリーズ途中読んでいないところもあるのだが、それでもおもしろく読めた。
華やかなスペイン社交界や、ゲシュタポとMI6の攻防、スペインの反フランコ勢力の地下活動など、映像表現として映画化しても、おもしろそうだ。
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2009年08月15日

ジーン・ワルツ 読了

海堂尊の「ジーン・ワルツ」を読み終わった。
ひかりの剣でも登場した帝華大学の産婦人科学教室が舞台となっている。
主人公は曽根崎理恵という産婦人科医に設定されている。
作者が現役の医者であるということもあり、現在の政府による医療政策に対して、非常に批判的な内容となっている。
物語は物語として、楽しめるが、厚生労働省の官僚による政策により、地域医療が崩壊している現状に対する批判が、随所に現れる。その点は、単なるエンタテイメント小説とは、ちょっと違うかも、、、、
少子化対策や産婦人科に関する様々な問題の指摘や、代理母出産の法制度の問題などにも言及していて、結構社会派小説になっている。
僕自身が介護の仕事をしていることもあり、厚生労働省の官僚たちの頭の悪さを日々実感していたりするのだが、生まれてくる現場である産婦人科の抱える問題と、死にゆく現場である介護の現場が抱える問題が、妙にシンクロして見えてしまった。

誰もが、何の心配もなく子供を作れて、誰もが何の心配もなく年老いることができることを、きちんと保障してこそ、国家が成り立ちうると思うのだが、今の日本は、その両方共が、まったくできてない。

今度の総選挙で、たとえ政権交代があったとしても、官僚の体質が変わらない限り、ダメなんだろうなぁ。
エリート国家公務員は、自らが、国民の税金により養われている公僕であるってことを、まったく理解してないんだろう。
政権交代もさることながら、官僚制度を変えなければ、日本の将来はないのかもしれないと、この小説を読みながら、思ってしまった。
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2009年08月11日

滅びのモノクローム 読了

三浦明博の「滅びのモノクローム」を読み終わった。
この作品は、第48回江戸川乱歩賞受賞作である。
以前にも書いたけれど、乱歩賞は、僕の好みに合っているのか、どれを読んでも比較的面白い。
というわけで、図書館で見つけたときに、乱歩賞受賞作ならってことで借りてきた。
読み始めたのが、広島の原爆記念日の翌日の8月7日。読み始めてすぐに長崎の原爆投下シーンが出てくる。
これは、原爆に関係する物語なのかと思って読み進めると、全然違っていた。まったくの肩透かしであった。
作品の端々に、現在の日本の政治が右傾化し、戦前のような情報統制の世の中が迫っているという危機感が垣間見られる。その感覚は共有できるが、話の持ってき方がやや強引。

物語の設定として、長崎の原爆を目撃した人物としてグラバーの息子である、倉場富三郎が登場するのだが、この辺のアイデアは秀逸だと思った。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%80%89%E5%A0%B4%E5
%AF%8C%E4%B8%89%E9%83%8E


この題材は、ミステリー仕立てにするよりは、歴史読み物として、より突っ込んだ話を書いたら、ずっと面白いと思う。
僕にとって、新しい発見があったってことでは、プラスだけど、ミステリーとしてはいまいちかな?
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2009年08月08日

介護入門 読了

モブ・ノリオの「介護入門」を読み終わった。
第131回芥川賞受賞作である。
書かれている内容は至って単純な、孫が祖母を自宅介護する際に生起する感情の起伏を描いた物なのだが、わざと文体を崩し、難解な単語を使うことで表現している。
こんな作品で芥川賞が取れるってことが不思議だし、こんな作品に芥川賞をあげてしまうってこと自体が、純文学が売れなくなる所以ではないかと思ってしまった。
つんのめるようなリズムの前半、やや単調な中盤、少しわかりやすくなる後半って感じの流れがあるのだが、こんな短い短篇では、読みづらいことこのうえない。

介護者の心情は伝わってくるのだが、どうせ書くなら、もう少しわかりやすい文体で、細やかな心理描写をすれば、より深い作品になったのではないかと思ってしまった。

自分の体験を通して思ったことを書きなぐるのであれば日記。それを整えて書くのならエッセイ。しかし、小説であるならば、自らの経験をベースにしたとしても、それを敷衍し、別の現場を取材して書かれるべきだと思うんだけど、、、、
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2009年08月06日

屋上ミサイル 読了

山下貴光の「屋上ミサイル」を読み終わった。
この作品、昨年の「このミステリーがすごい」大賞を受賞した作品のひとつだ。昨年は2作同時受賞になったとのことで、もうひとつの作品は読んでいない。
巻末にある選考委員たちの選評の中にもあったけど、前半が「包帯クラブ」後半が「終末のフール」って例えは、まさにそのとおりだ。
それでもそこそこ面白いのはキャラクターが立っているからかもしれない。特に国重が良い。また主人公(話者)の両親の描かれ方がなかなか魅力的であった。
お気楽に読める作品である。
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2009年08月03日

ホペイロの憂鬱 読了

井上尚登の「ホペイロの憂鬱」を読み終わった。
TRYやCHEを書いた作家で、スケールの大きさや話の展開のおもしろさで、これまでも何作か読んできたのだが、この作品は、まったくその逆。
相模原市のJFL傘下のサッカーチームが舞台で、そこで働くホペイロ(用具係)が主人公。ちまちまとした日常と他愛ない事件の連続である。
こんな文章も書けるんだって驚きと、ちょっとがっかりって気持ち、まあたまにはこういった肩の力を抜いた作品もいいのかも、、、なんて思いが交錯する読後感だ。

このところ、電車に乗る機会が多く、この手のお手軽な小説は、車中で読むには最適で、それなりに楽しめたんだけど、できればもう少し重厚で読み応えのある作品を期待したいなぁーー
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2009年08月01日

君たちに明日はない 読了

垣根涼介の「君たちに明日はない」を読み終わった。
タイトルからしてふざけていて、以前読んだ「午前3時のルースター」の作者じゃなきゃ図書館で手に取らなかったかもしれない。
調べてみると、この作品で、山本周五郎賞を受賞しているんだそうだ。
お話は、リストラを専門に請け負う会社に勤務する主人公が、依頼された会社に次々と出向いて、会社を辞めるように説得していく話。ここがタイトルの所以ってことなんだろう。
2005年の作品だが、今の世相を反映していると言っていいかもしれない。
ただ、語り口は、深刻になることなくちょっとHな描写なんかも盛り込んであって軽妙。
この作家はこういう文章も書けるんだと思ってしまった。
話の構成としては、一つの会社が終わると次の会社って風に続いていくので、短篇連作みたいな感じだ。
続編「借金取りの王子」ってのも書かれているらしい。
電車の中で気楽に読めるので、続きも読んでみようかな?
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2009年07月30日

オリンピックの身代金 読了

奥田英朗の「オリンピックの身代金」を読み終わった。
精神科医伊良部シリーズの作家だ。「空中ブランコ」で直木賞を受賞している。
この作品は、伊良部シリーズのコミカルな作風ではなく、それ以前の「最悪」や「邪魔」に近い。
初期の作品は、読んでいてイライラしてくるくらい、これでもか、これでもかっていう細かい描写が続くのだが、それがいい形で昇華されているのがこの作品だと思った。
舞台は1964年の東京オリンピック開催直前の日本。主人公は東大大学院生で、彼がオリンピックを人質にとり、国家権力との攻防を繰り広げる。
攻防とは言っても、ドンパチやら殺人がやたらと描かれるいわゆるハードボイルド物ではなく、当時の社会状況を巧みに取り入れて、かなりリアル。もしかしたら東京オリンピックの裏側で、本当にこんな事件があったかも、、、、なんて思わせてくれる。
この作品で、吉川英治文学賞を受賞している。

伊坂幸太郎のゴールデンスランバーも、得体のしれない巨大な権力を描いているのだが、その実態については実に曖昧。しかし、こっちの方は、読んでいて納得できる。
終わり方がいまひとつすっきりしないのだが、続編でも書くつもりなのかな?

それと作品の内容には関係ないが、誤植が目立った。主人公の名前島崎が島田になっていたり、午後1時のはずが、午前1時になっていたり、本を製作する上での編集者の力量が不十分だったのだろう。
最近この手の本を時々見かける。
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2009年07月24日

ひかりの剣 読了

海堂尊著「ひかりの剣」を読み終わった。例の「チームバチスタの栄光」を書いた作家である。
田口&白鳥コンビシリーズ以外の作品を読むのは初めて。内容は、タイトルからも想像できるけど剣道の話だ。
設定は、各医大の剣道部による対抗試合をテーマとした学園ものなのだが、これが高校の剣道部でも内容的には変わらないだろう。
随所に読者をくすぐるようなウィットに富んだ描写が見受けられる。同時にまた、彼の作品を熟読している読者には、他の作品の登場人物が、思わぬところに出てきたりして、これもまたうまいくすぐりとなっている。
ただ、ひとつの作品として読んだ場合、剣道の試合の描写はかなりおもしろいのだが、脇役の背景などが説明不足で、物足りない。
タイトルの「ひかり」は、登場人物の一人なのだが、その祖父は剣の達人って設定になっている。この辺は、もう少し突っ込んで書いてくれると、小説に厚みが出ておもしろかったのにと思ってしまった。
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2009年07月21日

ゴールデンスランバー 読了

伊坂幸太郎のゴールデンスランバーを読み終わった。
裏表紙裏のコメントによると、

「伊坂幸太郎的に娯楽小説に徹したらどうなるか」という発想から生まれた、直球勝負のエンターテイメント大作

ってことらしいのだが、あちこちツッコミを入れたくなるような綻びや違和感があって、読後感もすっきりしないものだった。
年代の差もあるんだろうけど、長いこと(何年も)草むらに放置しておいた車のカーステレオにCDが付いていたり、タイヤの空気が残っていたり、はたまた連続殺人犯なる人物が唐突に現れたり、何より主人公が敵とする存在が曖昧なまま終わってしまって、カタルシスがない。
読み終わって、「あーおもしろかった!」って感じさせてくれないと、エンタテイメントとは言えないと僕は思っているので、かなり残念。
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2009年07月13日

新世界より 読了

貴志祐介の新世界より 上下をようやく読み終わった。
実は、上巻は昨年の秋に読み終わったのだが、その後下巻を借りることができずに、半年以上たってしまっていた。
近くのコミュニティーセンターで上巻を借りた際は、下巻もあったのだけれど、大部の作品であったこともあり、また、下巻だけ借りる人もいないだろうと高をくくっていたら、その後ずっと借りることが出来なかった。
市の図書館に行って予約状況をみたら、なんと170人近くの人が予約していて早々と諦めてしまった。それが先日ようやく借りることが出来たという次第。

貴志祐介というと、青い炎や黒い家など、サイコホラーミステリー小説を書く作家だと思っていたのだが、この作品で2008年日本SF大賞を受賞している。

登場する生き物たちの名前などを見ていると、椎名誠の作品アドバードを彷彿とさせる。これも確か日本SF大賞受賞作だった。

ストーリーは、呪力を持った「人間」とその社会システム。人間を取り巻くバケネズミ。古代の文明を伝えるミノシロモドキなど様々な道具立てを用意し、核戦争後、超能力を持った人間世界を描いている。

ただ、なんでもかんでも呪力のところがあって、その呪力を抑制する機構なんてのも出てくるのだが、説得性に欠ける。

ちょっと暗いファンタジーSFってことで読めば納得かな?

とりあえず、下巻が読めて、昨年からずっと陥っていた欲求不満は解消された。
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